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学術大会長挨拶

 2018年度の大阪大会の成功に続き,2019年度の第6回日本小児理学療法学会は,2回目の分科学会単独での学術大会開催となります.その第6回大会はリハビリテーション発祥に縁の深い九州の福岡で開催することとなりました.日本における療育の歴史は高木憲次先生に始まりますが,この福岡の地でも,北九州総合療育センターの初代所長である高松鶴吉先生は療育の歴史に大きく名を残されています.

 高松先生は,著書「自立へ向かう療育」の中で,「療育とは個々の訓練ではなく,もっと全体的な注意深く計画され実施される子育てであることもわかってきた」とし,その子育てとは「育つ力を育てる」ことであると述べています.この著書が出版されたのは1994年ですが,療育が「個々の訓練ではなく」,「全体的」で「注意深く計画され実施される子育て」であるという考えは,2001年にWHOで採択されたICFの概念に近いものを感じます.私達療育に携わる理学療法士は障害を持つこども達の「育つ力を育てる」ことが大きな使命であるといえるでしょう.

 一方,GMFMGMFCSといった世界的に輝かしい業績を残しているCanChildP. Rosenbaumは,2011年に論文を著し(Rosenbaum P, Gorter J.W.: The ‘F-words’ in childhood disability: I swear this is how we should think!. Child: care, health and development. 2011; 38(4): 457-463.),その中で6つの ‘F-words’Fから始まる言葉)を示しています.その論文の中ではICFによって障害をどのように考え,捉えるべきかが明確になったとし,そのICFの枠組みの中に6つの ‘F-words’をあてはめ,特に障害を持つこども達について私達はどのように考え,捉えるべきかを述べています.最初の‘F-words’FunctionICFActivityに相当します.2番目の‘F-words’FamilyICFEnvironmental Factorsに,3番目の‘F-words’FitnessICFBody Structure and Functionに,4番目の‘F-words’FunICFPersonal Factorsに,5番目の‘F-words’friendsICFParticipationに相当し,最後の6番目の‘F-words’として,ICFには相当しないのですがFutureをあげています.

 先程も述べたように私達療育に携わる理学療法士は,障害を持つこども達の「育つ力を育てる」ことが使命です.そこで第6回日本小児理学療法学会のテーマとして,6つの ‘F-words’の中から何が相応しいかを考えました.「育つ力を育てられた」「こども」とはどういう「こども」なんだろうと考えました.そして,その「こども」のPersonal Factors,つまり「個人因子」を考える時,このPersonal Factorsに相当するFun,つまりこども達にとっての「楽しみ」,「喜び」について考えていくことは意義深いのではないかと思い,第6回のテーマとすることにしました.第6回日本小児理学療法学会のテーマは「障害を持つこども達の’Fun’について考える」です.

以上,第6回日本小児理学療法学会学術大会の開催にあたり,皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます.

 

6回日小児理学療法学会学術大会

学術大会長 奥田 憲一

ヘッディング 4

学術大会お礼のご挨拶


 2019年11月16日(土)~17日(日)の会期で、福岡国際会議場におきまして第6回日本小児理学療法学会学術大会を開催いたしました。昨年の第5回日本小児理学療法学会学術大会は、初めての分科学会単独開催として大阪で開催され、予想を上回る参加者が訪れ大成功となりました。そして2回目の分科学会単独開催となる、第6回日本小児理学療法学会学術大会はリハビリテーション発祥に縁の深い九州の福岡で開催することができました。

  福岡県北九州市にあります、北九州市立総合療育センターの初代所長である高松鶴吉先生は、日本の療育に大きく名を残されている方です。先生の著書「自立へ向かう療育」の中では「療育とは個々の訓練ではなく、もっと全体的な注意深く計画され実施される子育てであることもわかってきた」と述べられています。さらに子育てとは「育つ力を育てる」ことだとも述べられています。この「育つ力を育てる」にはどうすれば良いのか。自問の過程で一つの論文に出逢いました。Rosenbaum(2011)らが著したThe ‘F-words’ in childhood disability: I swear this is how we should think!です。その中にはFunction, Family, Fitness, Fun, Friends, Futureという、6つの’F-words’ が紹介されていました。そしてこどもにとって、何が一番重要だろうと熟考した結果、 ’Fun’だと確信しました。


  第6回の学術大会は、『障害を持つこども達の’Fun’について考える』をテーマとしました。そして、そのテーマに相応しい特別講演を久留米大学医学部小児科学講座の主任教授である 山下 裕史朗 先生に「発達障害のある子どもたちと楽しさを共有できる診療を目指して」のテーマでお話して頂きました。また、特別講演の他にも基調講演、教育講演、調査報告が行われ、最後のプログラムのシンポジウムでは「重い障害を持つこども達の’Fun’について考える」をテーマに、3人の先生方にご登壇頂きました。3人の先生方の貴重なお話とフロアーからの数多くのご質問により、非常に闊達で意義深いシンポジウムとなりました。


  2日間の学術大会では過去最多となる110演題が集まり、予想を遥かに上回る700名を越える方々に参加して頂き、盛会の中終えることができました。これも一重に全ての参加者の方々、小児学会運営幹事の皆様、講師、座長の皆様、さらに開催に際して企画、準備、運営に携わって頂きました準備委員、当日スタッフの皆様のおかげだと心から感謝しております。

 

本当にありがとうございました。最後にもう一度心からの謝意を申し上げます。


 

2020年1月9日

第6回 日本小児理学療法学会学術大会

学術大会長 奥田 憲一
準備委員長 松﨑 哲治

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